災害時、復旧に最も時間を要するのが“水のライフライン”です。
日本各地の防災担当部局や医療機関等が連携し、被災者の衛生環境と尊厳を守る
「生活用水の確保体制」の強化を進めています。
小規模分散型水循環システムの「広域互助プラットフォーム」。
その運営を担うのが、JWAD(Japan Water Association for Disaster)です。
PROGRESS
全国7ブロックで協定締結が完了
水循環システム相互支援が
日本全体へ拡がっています
災害時に水循環システム等を全国から被災地に届ける相互支援体制の実現に向け、自治体・医療機関の協定締結が各地で進行中です。
現在、北海道・四国・関東・九州など全国7ブロックで、プラットフォーム構築が本格始動。
JWADが事務局となり、都道府県間の連携と情報共有を促進します。
NEWS
協定締結済・合意自治体
北海道・東北
北海道|新潟(12月締結予定) ※
関東
神奈川
中部
富山
近畿
兵庫|福井|大阪(12月締結予定) ※ |奈良(12月締結予定) ※
中国
鳥取(12月締結予定)
四国
徳島|愛媛
九州
佐賀(12月締結予定) ※
※の自治体は12月締結予定

WOTA、富山県と「水循環システムの自治体間広域互助プラットフォーム」構築に向けて中部エリア初となる協定を締結

WOTA、北海道と「水循環システムの自治体間広域互助プラットフォーム」構築に向けた協定を締結

WOTA、愛媛県と「水循環システムの自治体間広域互助プラットフォーム」構築に向けた協定を締結

PROBLEM
大災害のたびに顕在化する
「生活用水不足」という問題

最も復旧が遅れる
「地中のライフライン」災害時、電気・ガス・通信がおおむね1カ月以内に復旧する一方、
上下水道管は地中に埋設されており、復旧まで長くて数カ月〜半年もの期間を要します。
こうした現実に対処するため、日本各地の自治体が生活用水のレジリエンス強化に取り組んでいます。
水は「つくる」より
「届ける」ことが難しい飲み水の備蓄や非常用浄水装置の配備は進んできました。
残る問題は、飲み水の100倍もの量が必要となる生活用水を「どう届け・どう使い・どう排水処理するか」ということです。
「造水 ✕ 水利用 ✕ 排水処理」を現地で完結させる一体型の仕組みとして、限られた水を繰り返し再生利用する水循環システムの有用性・必要性が政府方針等*で言及されています。*骨太方針2024, 内閣府避難所生活環境整備指針

用途ごとに異なる
「生活用水のボトルネック」災害時に必要となる生活用水は、飲み水・トイレ・キッチン・洗濯・手洗い・入浴など、用途ごとに必要な設備や運用が大きく異なります。
飲み水は市販水で、トイレは従来型の仮設トイレやトレーラー型・自己処理型等の新しい設備の登場で、多くの場面で対応が進んでいます。 大規模災害では、トイレ汲み取り等の広域でのオペレーション最適化が重要となります。
洗濯も重要ですが、被災者がその場で水を使用する入浴・手洗いとは異なり、集荷クリーニングや衣料支援といった輸送型の代替手段も存在する領域です。
入浴と手洗いのボトルネック解消のために
必要な総合調整機能一方で、入浴・手洗いは、大量の水・排水処理・用途特有の運用支援が同時に必要となる、最も代替の難しい領域です。
水循環システムだけでなく、避難所で使うための環境づくりや運用ノウハウも欠かせません。
この構造的な難易度の違いから、特に入浴・手洗いについては市町村単位の物資の備蓄や調達だけでは確保が難しく、
都道府県を中心とした広域レベルでの総合調整が重要になります。JWADは生活用水、特に入浴・手洗いに関する広域調整と現場運用を全国的に支える仕組みの構築を目指しています。
災害時の水不足の解決を目指し、
「水循環型シャワー」等の活用を
政府も推進
2024年6月
経済財政運営と改革の基本方針2024
災害対応において、水循環型シャワーの活用を
推進するとの記載
2024年12月
「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」
生活用水の確保のため、シャワーや仮設風呂の備蓄、
水循環型シャワーの活用を明記2024年12月
「新しい地方経済・生活環境創生交付金」
地域防災を支援するため、シャワーカーや水循環型シャワー、仮設入浴設備の半額を補助

DISASTER RELIEF
現場で実証された
生活用水の確保体制
水循環型シャワー「WOTA BOX」と水循環型手洗いスタンド「WOSH」は、災害時の生活用水確保のため、これまでに全国150以上の自治体に導入されています。
令和6年能登半島地震においては、全国の自治体から集約した「WOTA BOX」100台、「WOSH」207台が被災地全域に展開され、長期断水地域の避難所の89%および医療・福祉施設68箇所で、シャワー入浴・手洗いに活用されました。発災直後の1月4日から12月26日まで続いたこの支援活動が、広域的な自治体連携による生活用水確保体制の重要性を示しました。
また、公益財団法人日本財団をはじめとする民間企業・団体のご協力により、迅速な体制構築が実現できたのも大きな教訓でした。広域的な自治体連携の基盤は、民間企業・団体からのご協力の受け皿としても機能します。

都道府県をハブとした集約・配備で
「 発災から1週間以内 」
での支援を実現

「広域互助プラットフォーム」の
構築により
各自治体の断水対策コストを
大幅に削減
地震や風水害による断水は、いつどこで起こるか分かりません。
そのとき、避難所等で必要になる生活用水と衛生設備の量は膨大です。
たとえば令和6年能登半島地震の発災1週間後の時点においては、十数の被災自治体で約3万人もの方々が避難所に身を寄せており、 その全員の心身の健康を保つために必要な入浴施設の数は、1自治体あたり平均40箇所*にも上りました。
しかし今後、全国1400以上の自治体が水循環型シャワー等を備蓄し、被災自治体に迅速に届けられる広域互助プラットフォームが整えば、 能登半島地震級の断水被害に備えて入浴・手洗い手段を確保するコストは各自治体で数十分の1〜100分の1にまで低減される可能性があります。
*災害や紛争における人道支援に際し、被災者が最低限の生活環境を確保できるように定められた国際基準「スフィア基準」に則り、50人あたり1箇所の入浴施設を確保する場合

JWAD(Japan Water Association for Disaster)の役割
広域互助プラットフォームを運営・調整する中核組織がJWAD(Japan Water Association for Disaster)です。
JWADは、自治体・医療機関等が連携する官民協働の中核組織として、広域互助プラットフォームの事務局を担い、平時の体制整備から災害時の現場対応までを一元的に支援します。

1.平時の体制整備
相互支援体制の実効性を高めるべく、平時からの情報発信や訓練を通じ、システムの事前分散配備を進めるとともに、災害時の集約・最適配分の体制を整備します。

2.災害時集約
被災都道府県からの要請を一元的に受け、被災を免れた自治体が保有する「水循環システム」を都道府県単位で集約し、被災地への円滑な輸送を支援します。

3.最適配分
被災都道府県と連携し、断水地域の水需要を把握した上で、同一都道府県内の市町村間における「水循環システム」の最適配分を計画・支援します。
広域互助プラットフォームのこれから
JWADは、全国の都道府県と連携しながら、広域互助プラットフォームの構築を3つのフェーズで進めています。
構築期(2025-26年度)では全国連携の整備を、実装期(2026–27年度)では運用体制と物流網を、制度化期(2028年度以降)では標準化・認証制度などの仕組みを整えていきます。
| フェーズ | 期間 | 名称/テーマ |
|---|---|---|
| Phase 1 : 構築期 | 〜2025年度 | 全国的な連携の枠組みを整備
|
| Phase 2 : 実装期 | 2026〜2027年度 | 平時訓練と災害時運用の両輪を確立
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| Phase 3 : 制度化・標準化期 | 2028〜2030年度 | 日本型生活用水レジリエンスモデルの確立
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RELEVANT INFORMATION
『能登半島地震、及び国難級災害に
おける「災害水ストレス」レポート』

2024年3月11日公開 第一報
課題の規定とこれからの被害想定試算
- 課題となる「災害水ストレス」の規定
- 国難級災害における被害規模の試算
- 有事の迅速対応を実現する配備方法構想
- 能登支援での水循環システム活用事例


Coming soon 第三報
被害を繰り返さない構造的解決案
- 災害対応における行政課題の分析
- 既存手段の仕様面・運用面の課題分析
- 課題解決のインパクトシミュレーション
- 構造的解決に向けた具体施策の立案